■居所の認定について
勤務する事務所が原告の代理人をしています。
被告の住民登録上の住所地宛の特別送達が、平日休日とも「不在」を理由にできず、書記官の指示により、原告が2度居住調査をしました。同住所はマンションの一室です。
1 同居室前には、被告が経営する会社名と被告の姓がアルファベットで書かれた表札が掲げられていました。
2 郵便受の中には市区町村役場から被告宛の郵便物が見えました。
3 管理会社に23照会をしたところ、同居室の契約は被告本人との間の契約で、
4 契約時の届出によれば入居者は被告本人となっていて、管理会社は居住していると認識している旨の回答がありました(但し、現地に管理事務所があって日々居住を確認している訳ではないとのこと)。
5 複数の近隣住民への聞き込みによれば、近所付き合いはないので被告が居住しているかどうかはわからないが、複数の人物が出入りしているようだ、とのこと。
以上から、付郵便送達の上申をしたところ、裁判所書記官によれば、近隣住民から「被告が居住している」との証言を得られない限り、以上の報告だけでは被告が居住しているとは認定できない、との連絡がありました。
一度執行官送達をしてみることはできますが、不在で不奏効の場合、どうなるのでしょう。
われわれには捜査権はないので、得られる情報には限りがあります。例えばオートロックなどで近隣住民の証言が得られない場合、付郵便も公示もできない状態を続けるというのでしょうか。
書記官が「居住」を認定すべき基準のようなものがあれば、教えていただければ幸いです。
11/15 13:48 付郵便にしたければ被告が出入りしているところを見たとか話...
付郵便にしたければ被告が出入りしているところを見たとか話をしたとかの証言が必要ですが、これは困難ですね。
>「不在」を理由にできず被告が居住しているとは認定できない
「いる」と確認できないからといって即「いない」と認定はできないが、けっきょくどこにいるのかわからないのであれば、住所不明→公示送達のながれになると思われます。
この場合は、近隣住民の「そんな人見たことないよ」とか「最近はその部屋に出入りしている人は見ないなあ」といった消極的な証言が有用になってくると思います。電気のメーターは動いていますか?部屋を借りっぱなしで別住居に移転しているとかもあり得るので。そうした状況が推知できると良いのですが。
11/16 11:56 送達について
半分、オフレコ、半分実務上のノウハウということで参考にしてください。
送達不能の場合、被告未送達の場合、多くの場合は被告が受け取り拒否の附郵便送達と被告行方不明の公示送達の流れになります。この場合、被告がいれば附郵便、いなければ公示送達ということになります。
実際に現地にいくと、中に入れるわけでもなし、住んでいるのかいないのかは分からない場合が多いかと思います(出てくればいるし、別の人がいれば行方不明ですが、いない場合には分かりません)。そして、裁判所の言うとおりにやると下手をすると住居侵入に問われかねない場合もあり(実際に某弁もタワー型マンションでドアまで行って調べてこいといわれて抵抗したことがあります)、非常に微妙なバランス感覚が要求されます。
さて、某弁はいそうかいなさそうかをまず判断し、いそうな場合は附郵便に有利な情報(郵便物が届けられていて多くないとかメーターが回っているとか)、いなさそうな場合は公示送達に有利な情報(管理人がいないといっているとか、郵便物がたまっているとか)を収集することに努めます。
次に、裁判所の書記官に怒られることを覚悟で書きますが、民事訴訟法上、送達の責任者は書記官であり(民事訴訟法上98条2項)、別に当事者が責任を負っているわけではありません。本来、書記官がやるべきことを代わってやってあげるという関係に立ちます。
書記官は送達に問題が生じると自らの責任になるため、細かいことを言いますが、本来、裁判所のやるべきことを代わりにやっているに過ぎないのです。そこで、無茶な要求(上記のタワー型マンションに入れみたいな要求)が出た場合は附郵便の上申、もしくは公示送達の申立をして少々時間を経過させます。
なお、依頼者にはなるべく早く判決がほしいという利益がある場合がありますから、この段階で依頼者の了解は貰っておきます。
そうすると、取り下げに応じなければ(これは義務ではない)、裁判所が困るので(長期未済になり、たぶん立場的に困る)、最低限これをやってくれれば、こういう風にするということを言ってきます。
まとめると、
① きちんと附郵便を目標にするのか公示送達にするのかの目標を決めて、雑多に情報収集をして書記官を困らせない
② ただし、几帳面で無理な要求する書記官に対しては、心の中で「あんたの仕事を代行してるんだ」という感覚を持ち、依頼者の了解を貰い、じっくり時間をかける。そうすると、裁判所が困って折れなければならない法構造になっている
ということです(以上のことは、以前「できる書記官」から教わったことをもとに自分の中で解釈を加えたものです)。
なお、こんなことをやると裁判所からは従順でない弁護士という評価になるので(某弁は一定の従順さは必要なものの、極めて従順な弁護士なんてほめ言葉でもなんでもないと思っています)、事務職員の立場としては弁護士の立ち位置を弁護士と協議することをお勧めします。
11/16 12:04 ついでに雑談
前に、送達で裁判所が余計な電話(被告から電話を受けて、所在も聞かず、今はそこにいないけどそのうち電話をするから、ガチャ)みたいな電話を受けて、原告の所在調査を命じ、現地調査に行っていないことを確認して、公示送達の申立をしたところ、どこに行ったのか調査しろとほぼ不可能なことを要求されたので、上記の投稿の最終手段を使ったことがあります。
このとき、書記官から、「送達に瑕疵があって再審になったら先生も困るでしょう」と怒鳴られましたが、弁護士的にはぜんぜん困らないんです。なぜなら、附郵便や公示送達で判決を取得した場合、ほぼ判決をとっても回収不能なので、再審でも出てくれるほうがよっぽど回収の可能性が出てくるのでいいんです。書記官は再審になって送達が違法となったら困るんだろうなと思いつつ、内心で「うちら(当方依頼者および某弁)の知ったことじゃないんだよなあ」と思っていたのを記憶しています。
11/17 16:43 雑談に便乗
某弁さんいつも参考になる書き込みありがとうございます。以下私も雑談(トピ主さんの参考にならずすいません)です。
>書記官から、「送達に瑕疵があって再審になったら先生も困るでしょう」と怒鳴られましたが、弁護士的にはぜんぜん困らないんです。
>再審でも出てくれるほうがよっぽど回収の可能性が出てくるので
私もほぼ同様の会話を書記官さんとしたことあります。その時に凄い温度差を感じましたね。
「ああ、この人達の頭にあるのは、『自分の決定が後から否定されないかー』なんだな、と。
正当な権利実現へのハードルを無意味に上げてないかとか、自分達が作成した判決文や差押命令が紙切れになるとか、そういうことはほとんど気にしてないんだなあ」と。
(そんな人が全員ではないと思いたいですが、、、)
ことの是非はともかく、裁判所の中の人達が一体何を気にして仕事してるか、について、私達はよく知っておくべきなのでしょうね。
11/19 17:56 トピ主です(やや雑談に傾斜)
先生にもご発言いただきありがとうございます。
どうも人が悪いのか、放置作戦は既に頭の片隅にあったりしていますvv
近所への聞き込みの際、「○年○月○日生れの法務太郎さんは、確かにそこに住んでおられるということで間違いないですね?」と聞けば、たいてい「そこまではっきりとは分かりませんね。」という回答になるのではないでしょうか。私だって近所の奥さんのファーストネームや、ましてや生年月日なんてほとんど知りませんし。
それに、「確かに住んでおられますよ。」という回答をもらったとしても、「今現在、確かに住んでおられますか?」と聞けば、「さぁ。」となるのが普通でしょうね。
近所の証言があったとしても、責任を持って証言できるレベルか、今現在住んでいるのか、といった、書記官として“まっとうな”疑念を抱けば、不郵便送達はできないことになるように思います。
まずまちがいなく住んでいると思われても、確証がないから不郵便にできず公示というのは、被告に実際上かなり不利ですし、一応調べた上で確かに今住んでいると確証までは得られない場合などは、不郵便と公示の両方を行なうようにできないものでしょうか(法律の問題ですが)。送達時期については、公示を基準に、答弁書が提出されるなどした場合は書留の受領日にするとか、フレキシブルに対応できるようにも思うのです。何度も調査をしているよりは、さっさと公示をしたほうが早いので、原告不利と言うことにもならないように思います。
それはそうと、玄関オートロックのマンション住まいの場合など、数週間旅行に出ている間に公示送達で判決が出ていて本人は知る由もない・・なんてことがあるかも知れませんね。
なお、以下の判例もあるようなので、結局原告側にかなりの責任が返ってくるようになっているようにも思い、公示は最後の手段との印象は持っています。
民事訴訟関係書類の送達事務は、受訴裁判所の裁判所書記官の固有の職務権限に属し、裁判所書記官は、原則として、その担当事件における送達事務を民訴法の規定に従い独立して行う権限を有するものである。受送達者の就業場所の認定に必要な資料の収集については、担当裁判所書記官の裁量にゆだねられているのであって、担当裁判所書記官としては、相当と認められる方法により収集した認定資料に基づいて、就業場所の存否につき判断すれば足りる。担当裁判所書記官が、受送達者の就業場所が不明であると判断して付郵便送達を実施した場合には、受送達者の就業場所の存在が事後に判明したときであっても、その認定資料の収集につき裁量権の範囲を逸脱し、あるいはこれに基づく判断が合理性を欠くなどの事情がない限り、右付郵便送達は適法であると解するのが相当である。(最高裁判所平成10年9月10日第1小法廷判決(平成5年(オ)第1211号)
11/19 18:02 訂正
不郵便→付郵便 でした。恐縮です。
11/19 18:39 もう少し雑談
昔、私も同じような視点で悩んだことがあって、あるときとある事務員さんに、「究極的には住民票上の住所で受け取らないんだから、受け取らない人が悪いんですよ」と言われて、吹っ切れたのを覚えています。
ちなみに、某弁は最後の収集先を交番にしていることが多いです。
11/20 10:58 住所といえるためにはその場所を人間が継続的に生活の本拠と...
住所といえるためにはその場所を人間が継続的に生活の本拠としていることがなければならないわけですよね
「放置」とは少しちがうのですが、期間を空けて(1ヶ月くらい)複数回の現地調査を試みた事があります
1ヶ月前にドアに挟まっていた水道局の請求書が依然として挟まったままになっているとか水道や電気のメーターが停止していると思われる状態(1ヶ月前に見たときと数字が動いていない)を確認するとかライフラインが稼働しておらず、かつ、直近の1ヶ月間に立ち寄った形跡がないことを伺わせる事実を集めることで住所不明の確証をとりやすいと思いました
以上は外部者の出入りが自由にできるアパートなどの場合ですが、オートロックのマンションの場合ですと、内部に入ることができないので、管理会社又は管理人に聞き、被告が引っ越していないと確認できれば、それ以上の追究は相当な方法では不可能ですからそのことを報告書にまとめて提出すれば、相当と認められる方法により収集した認定資料として認められやすくなると思います。
事務員の行う現地調査は犯罪捜査ではないので、通常の人間が普通にできる限度で行えば良く、そのような調査を行うこと自体が必要なのではないでしょうか。いわゆる「真実」が必ずしも求められているわけではないと思います。