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弁1事1の事務所です。
今週、複数の依頼者から、同じような厳しい内容の電話が立て続けにあり、
かなり凹んでいます。
事件の内容はここでは書けませんが、進行に関するいら立ちの電話です。
誰もが最初の契約の時には信頼関係が築けていたと思っていたので、
余計に頭が混乱しています。
依頼者からは、電話口で、かなり強い口調で露骨に不信感を示されました。
いずれも先生が不在のときの電話で、先生への伝言を頼まれました。
但し、事務員である私への不信感や、事務所の体制全般への不信感も
混じっていました。
依頼者の声からは、居ても立ってもいられず、我慢の限界だという
感じが伝わりました。
いずれも10分くらいの電話でしたが、私は一方的に言われるままでした。
もっと迅速に進めてくれると思っていたとか、
これからどうなってしまうのか心配で夜も眠れないとか、
何でこんなに時間がかかるのかとか、
人の人生が掛かっている件がどれだけ大切なのか分かってくれてないとか、
同じようなことを数分間のうちに何回も言われました。
「繰り返しになりますが」とか「念のため言いますが」とか、
そんな言葉そのものを何回も言われました。
私が「はい」とか「弁護士に伝えます」としか答えられないため、
依頼者は余計イライラしているのが解り、私ももどかしい思いをしました。
依頼者のほうは、「必ずやります」「申し訳ございません」という
言葉を聞きたいため、
なかなか電話が終わりませんでした。
依頼者は、私の対応がマニュアル式の型通りのものであったことにも
怒っており、
「事務員さんからも人間としての対応が見られない」と言われました。
それでも依頼者は、「お宅を信用してないわけではないですが」と言って、
委任を辞めるというようなことはありませんでした。
別の弁護士に頼んだほうがよかったとか、別の事務所がよかったとか、
弁護士選びを間違えたとか、依頼者がそう思っていることは分かります。
しかし、依頼から数か月も過ぎてしまって、高い着手金も払っており、
今さら別の弁護士に変えるというのが無理だというのもわかります。
そもそものトラブルで疲れているのに、余計なトラブルを増やせないのは
当然です。
私が一番近くで事実関係を見る限り、依頼者の電話はどれも図星でした。
社会常識から考えれば、依頼者が怒るのは当然の状態でした。
依頼者のほうに筋が通っているのは、近くで両方を見ている私からは
明らかでした。
但し、私には事務員としての立場があるので、そう言えないだけです。
先生は最近、何だかやる気がありません。放置案件が増えています。
私に丸投げされれば、私が休日出勤してでもやるのですが、
その指示すらもないので、私が冷や冷やさせられています。
私は定期的に、それとなく先生に一覧表を渡したり付箋を貼ったりして、
お伺いを立てるのですが、これも他の書類の間に挟まって
放置されてばかりです。
先生は、もともと人に親身になる性格ではないのですが、
仕事に飽きてきています。
楽して儲かる仕事ばかり探しており、そうなっていない現状に
イライラしています。
以前と比べて事件の件数も減って、それほど忙しくなくなったのですが、
1つ1つの事件を丁寧にやる方向には行かず、むしろ逆になっています。
今回の依頼者からの電話も、それほど儲かる仕事ではありません。
経営者としては正しいと思いますが、儲からない仕事に時間は
かけない主義です。
今回の依頼者からは、それまでにも何回か多少催促らしき電話があり、
先生が対応しており、私は横で聞いていました。
先生は、依頼者や相手方の名前を間違えたり、
話の様子が投げやりだったり、
やる気のないことは電話の向こうで依頼者にも
伝わっているのではないかと思い、
いつ依頼者が怒り出すか、私は内心冷や冷やしていました。
しかし、事務員の立場にある者としては、そのような考えを
殺すしかありません。
その意味で、今回の依頼者からの怒りの電話は、
ある程度予想できたことでした。
それだけに、「事務所が親身になってない」と言われることは、
事務所のために尽くしてきたはずの私としては、かなり凹むことでした。
その一方で、事務所のホームページには
「依頼者のために親身になります」とか
書いてありますが、こんなものがリップサービスであるのは常識であり、
依頼者のほうもその辺は当然理解すべきだという反発心もあります。
先生が事務所に戻ったあと、私はできるだけ依頼からの電話を
正確に伝えました。
もちろん、先生は非常に不機嫌になります。
先生はここ半年ぐらい、事務所の売上が下がっていて、
いつも機嫌が悪いです。
事務はほとんど私に丸投げで、私は忙しいですが、先生は暇そうです。
それだけに、先生は色々なことに頭が回って、
私に八つ当たりすることも多いです。
私が依頼者からの電話の内容を全部伝えないうちから、
先生は「余計なことを言ってないだろうな?」と
不信の目でにらみながら聞くので、
私も萎縮して、なかなか上手く電話のニュアンスを伝え切れません。
私が依頼者の言葉をメモしたものを読み上げても、上手く伝わらず、
先生はますます私に向かってイライラするばかりで、
同じことの繰り返しです。
先生は、
「50万円程度の仕事でゴタゴタ言われるのが一番嫌なんだよ!」とか、
「そんな50万程度のはした金で弁護士を利用できると思ってるのか!」とか、
「最初からこんな件やりたくなかったんだよ!」とか、
「ちゃんとやってるのにやってないと言われるのが腹が立つんだ!」とか、
「そんなに文句言うなら、もう辞任するか?」とか、
私に向かって激しく怒ります。
私は依頼者になり代わって怒られていますが、先生にしてみれば
構わないのでしょう。
私は内心だけで、「実際にはちゃんとやってないでしょう」とか、
「一旦引き受けた仕事はやるのが義務でしょう」とか思うのですか、
そんな気持ちが生じていることを自分で認識する余裕もなくて、
ただ怯えています。
一番心が折れるのが、
「電話でゴタゴタ言われるのが一番嫌なんだ!」という言葉です。
いつも、電話でゴタゴタ言われる役目をしているのは私です。
むき出しの悪感情を投げつけられて怒られると、
精神的にかなり疲労します。
但し、依頼者は先生に怒っているので、
私が怒られていることにはなりません。
そして、それを聞いた先生は、依頼者に対する怒りを私にぶつけます。
これも、先生は依頼者に怒っているので、
私が怒られていることにはなりません。
理屈の上では、私は双方から怒られていないのですが、
実際には双方からの怒りをもろにかぶって、ひたすら心を殺しています。
私はいずれも謝れる立場にないので、勝手に謝ることもできず、
それによって相手はますます怒りを倍増させている感じで、
怒りは長く続きます。
仕事とは何か、役割とは何か、社会人や組織人の責任とは何か、
色々と考えると惨めになってきて、ふっと死にたくなります。
先生は、もともと安い仕事はやらない主義で、
「弁護士の肩書きはそんなに安くない」と言うのが口癖です。
しかし、法科大学院の卒業生が増えて、弁護士が増えてきて、
利益が減りました。
そうすると、本来は弁護士がやる値段の仕事ではなくても、
受けざるを得なくなります。
それでも、やる気が出るわけではないので、どうしても力が入りません。
しかも、単価が安い仕事をどんなに積み上げても、
やっぱり売上が上がらないので、
このような仕事に付き合わされる際にはいつも機嫌を悪くします。
先生は、このような嫌々受けた件では、
代理人を辞めることばかり考えています。
依頼者から委任を取り下げると言われれば、喜んで辞めます。
でも、依頼者は先生に不信感を表明しながら、
なかなか委任を取り下げてくれません。
そもそものトラブルで疲れており、その解決が先だからです。
先生を信頼していなくても、一度頼んで進んでしまったものは、
またゼロから始めるのは死ぬほど大変です。
別の弁護士の知り合いもおらず、払った着手金の全額も返ってこないなら、
嫌でも先生への委任を続けているしかありません。
自力で別の弁護士に頼む精神的余裕がなければ、それが普通でしょう。
ですので、依頼者は継続を望んでいるのにもかかわらず、
先生のほうから辞任した件が、今まで何件かあります。
依頼された案件の存在すら忘れていたとか、
折り返しの電話をかけないとか、
依頼の数か月後にまた最初から説明させるとか、そういう事実ではなくて、
そのような先生の対応の不誠実さを責めてきた
依頼者の言葉に焦点を当てて、
協力関係及び信頼関係は喪失したと判断し、辞任します。
信頼関係の破壊という点に絞ってみれば、
依頼者が高圧的にクレームを付け、
「信頼できない」と言ったのが発端なので、
先生の論理の筋は通っています。
私も最初は釈然としなかったですが、だんだん慣れてきた感じです。
このようなことで紛議調停や懲戒請求を受けたことはありません。
依頼者も、もともとの問題が解決していない以上、
疲れて面倒くさくて、余計なことに関わっている暇はないのでしょう。
私が今回の依頼者からの厳しい電話にかなり凹んだのは、
依頼者の言い分がもっともであり、
その焦りが電話の声から伝わってくるからです。
事務員の立場を離れた人間としては、
「ごもっともです」と言うのが正しいと確信します。
しかし、実際の立場上は、
「そうですね」「弁護士に伝えます」しか言えません。
そうすると、人間としての本音の言葉と、立場上の嘘の言葉が分かれます。
社会人として先生の下で働き、お給料をもらっている立場では、
このような場面で立場をわきまえない発言は失格です。
依頼者は、あくまでも先生と契約をしているのであり、
私は先生に庇護されています。
私は自分の名前では契約が取れません。
ですので、私は先生に対して
「安い仕事でもしっかりやってください」とか、
「もっと親身になったほうがいいです」とか、そんなことは言えません。
先生の判断で放置している案件を、事務員が偉そうに催促はできません。
事務員ごときが、先生に仕事の順番を指示できるわけがありません。
仕事がなければ、私のお給料もなくなり、首を切られます。
先生あっての事務員であり、嫌なら辞めればいいのです。
そんなことは、誰に言われなくても最初からわかっています。
しかし、何か月も経ってから
「こんな安い仕事は最初からやりたくなかったんだ」と
言うような言葉を聞くと、やはり心が痛くなります。
この事務所を信頼して頼んでくれた依頼者の方に対して、
申し訳なくなります。
そして、依頼者のために尽くし、
頑張ろうと思っていた心が折れるのも事実です。
事務員も人間ですから、依頼者のために一生懸命頑張って、
お礼を言われるのは嬉しいことです。
別に、お礼を言われるのが目的ではありません。
また、先生を飛び越えて、
事務員にお礼を言ってくれるのが嬉しいのでもありません。
先生が依頼者からお礼を言われると嬉しいのです。
先生がほとんど仕事をせず、丸投げされて私がやっていても、
それでも先生への感謝の手紙が来ると、とても嬉しい気持ちになります。
こうやって仕事のモチベーションが上がると、
弁1事1の仕事は上手く回ります。
私はお金など要りません。給料が安くても、
ボーナスなどなくてもいいです。
事務員の努力は先生の功績で、先生のミスは事務員の責任でも、
それで当然です。
これが私が心の中で思っている本音です。
しかし、事務員の立場を逸脱していると思うので、抑え込んでいます。
そうなると今度は、心の中で依頼者のために心を痛めているほど、
依頼者から電話できつく言われると、
不当であるという気持ちが沸いてくるのです。
人の気も知らないで、一方的に怒ってくる依頼者が憎らしくなってきます。
しかし、実際にはどう考えても依頼者のほうに筋が通っています。
私は、自分のせいではないという気持ちや、
自分のせいであるという気持ちや、
自分のせいではないと思ってはいけないという気持ちや、
自分のせいであると思ってはいけないという気持ちや、
色々な感情が一気に押し寄せて、
瞬間的に飛び降りて死ねば楽になると思うのです。
先生は、最近は1日数回は怒鳴るので、
それも笑っていたのが急に怒るので、
私は正直言って怖いです。
私自身のミスならば、素直に申告して謝ればいいので、話は簡単です。
そうではなくで、裁判官、相手方弁護士、
依頼者に対する怒りをぶつけられると、
全身を固くして「そうですね」「おっしゃる通りです」と言うのみです。
先生はいつもイライラして、私はいつも怯えています。
私はやっぱり最後のところでは死にたくないですから、
先生を怒らせないようにするが第一で、
身を守るために自衛しているところがあります。
しかし、それがなかなか難しいのです。
依頼者どうなろうと知ったことではないとか、
安いけれども給料だけを目的にするとか、
私もドライに徹すれば楽になります。
でも、やはり私は人間です。
先生や事務所を信頼し、
同じように私のことも信頼して頼んでくれた依頼者に対して、
良心が痛むので、なかなか割り切れません。
それに、依頼者のためを思っていると、なぜかミスが減ります。
依頼者のため、と思っていると、
精神衛生が良好な状態で仕事に取り組めます。
私は履歴書にも
「困っている人の力になりたい」と書いて採用されましたが、
先生にとってはそんなことはどうでもいい話なのでしょう。
事務員たるもの、先生のために尽くすという基本を飛び越えて、
依頼者のために尽くすという意思を持つことは
おこがましいことだったのです。
依頼者は、この件にどれだけ人生がかかっているのか、
どんな気持ちで藁をも掴む気持ちで弁護士に頼もうと思ったのか、
私はこのようなことに心を痛めていると、
自分の身が持たなくなると知りました。
先生が「依頼者に親身にならない」という態度なのに、
事務員が親身になるのは、出すぎた振る舞いです。
事務員は、本来はできないはずの弁護士の仕事に
入ってしまうことになります。
社会人は怒られるのが仕事ですから、
こんなことで落ち込んでいては失格です。
しかし、依頼者と先生に立て続けに怒られると、何をどうしたらよいのか、
私のどこが悪かったのか、感情ではなく論理の部分で混乱します。
先生は些細なことカンシャクを起こし、勘違いで怒鳴ります。
依頼者は、事務所への不満が耐え切れなくなって、
ついに電話をして怒ります。
私がここで正しい選択をしようと思うとき、
人間として正しいことと、組織人として正しいことが異なっていたならば、
組織人としての行動を選択するのが当たり前のことです。
しかし、そもそも、人間として正しいかというのも私の勝手な思い込みで、
事務員である以上全人格的に先生の論理に従うべきであり、
このような選択肢が生じる余地はないとも思えます。
給料は安くてもいいから依頼者に貢献したい、などという希望は、
今の世の中では甘ったれていると言われます。社会は厳しいです。
しかし、放置案件や依頼者からの苦情は懲戒の危険があります。
私は事務員として先生から責任を押し付けられるのは一向に構わず、
その時には全ての責任を負って謝罪と賠償をするつもりですが、
余計なトラブルが増えてしまった依頼者の方のことを思うと心が痛みます。
世の中は厳しく、どこの会社の上司・部下の関係も同じようなものであり、
部下は上司に従うのが当たり前です。
しかし、放置はよくないので混乱しています。
そもそも、事務員の分際で「放置案件である」と判断していいのか、
放置しているか否かは先生が決めることだという考えが、
ここでの正解です。
しかし、依頼者から「放置されている」と明確に言われると、
私は返答に困ります。
前置き長くなりましたが、質問です。
(1)
先生は、依頼者からゴタゴタ言われるのが一番嫌だと言っています。
事務員としては、先生の意を汲んで、先生が嫌がることを
しないほうがいいのでしょうか?
その場合、事務員のミスであると言われないために、
何か手を打つ必要はありますか?
(2)
依頼者からの催促の電話の内容を先生に伝えるとき、
メモと口頭を併用しても、
なかなかニュアンスが伝わりません。
私が使った思わぬ言葉に反応して激怒したり、
行間の部分が上手く伝わりません。
どのようにすればよいですか?
(3)
人間は誰しも自分の命と健康が大事であり、自己保身も必要です。
事務員が精神衛生を図る際には、
依頼者に対して献身的になるという部分と、
いつも先生の顔色を窺って機嫌を損ねないようにする部分との
兼ね合いが大事です。
先生が依頼を放置していて、依頼者の不満のほうが正しいと思っても、
「弁護士先生ともあろう者に文句を言う人間は失礼だ」くらいの気持ちで、
依頼者を悪者にしないと、やはりこの職業は身が持たないのでしょうか?